2018年11月3日土曜日

36 もしも首相官邸に米軍機が落ちたら

 事務所の窓から時折、横田基地の方角から都心に向かって飛んでいくヘリコプターを見かけます。いつも昼少し前です。日米合同委員会が月2回開催されており、六本木にあるヘリポート(これも米軍基地です)に、在日米軍の高官を乗せていくそうなので、そのヘリコプターではないかと思いながら見ています。
 このヘリが、万一整備不良か何かでコントロールを失い、六本木から目と鼻の先の首相官邸(永田町)に落ちたら、どうなるのでしょうか。

 まさか首相官邸に米軍機が落ちるなんてことは、とお思いでしょうか。
 ありえないとは言い切れません。
 飛んでいるものなのだから、絶対に落ちないとは言えない。
 万が一のことを考えて、そういうときにもきちんと対応できる体制を整えておくのが、国を預かる者の使命、つまり政府の仕事です。


 過去の事例から考えると・・・


 2004年、沖縄国際大学に米軍ヘリが落ちました。大学側の死傷者はありませんでしたが、電話やインターネットの回線は切られ、接触した1号館は損傷、周辺の木々も焼けました。このとき、米軍は消火直後に現場を封鎖、6日後に機体を搬出するまで、大学の関係者どころか、消防・警察・行政の関係者の立ち入りを一切禁じました。
 県知事は上京し、日本政府に対応を求めましたが、米軍に対する具体的な働きかけはなかったそうです。結局、事故機の乗員の使命も明らかにされず、起訴はされたものの、全容は解明されず、その責任を問うこともできませんでした。
 その後大学は、1号館を取り壊し、建て直したそうです。

 もし首相官邸で同様のことが起きたら、米軍は首相官邸を封鎖するのでしょうか。
 政府関係者を始めとして、消防も警察も立ち入りを禁じられるのでしょうか。
 それを関係者は唯々諾々として受け入れるのでしょうか。
 その場合、首相官邸は米軍に乗っ取られたのと同様の状態になり、機能不全に陥ります。
 このことに日本の政府関係者は気づいているのでしょうか。

 まさか、米軍はそんなことはしないだろうと思うかもしれませんが、現在の日米間の取り決めでは、米軍がそう主張すれば断れないと言います。日本の主権を守る法整備がきちんとできていないのです。
 米軍が事故を起こした際に、現場を封鎖するのは、それが日米協定によって許されているからです。事故の検証ができないのは、「軍事機密」ということで、米軍にはそれを明らかにする義務はない、ということも決められているのです。


 米軍のやりたい放題、止められないのか


 沖縄国際大学の事故後、米軍の対応が大きな批判を浴び、事故現場の保全管理・情報交換について、日米合同委員会でガイドラインを作成したといいます。しかし、その後の事故における状況を見ると、そのガイドラインが、逆に米軍に現場占領の根拠を与えた結果になっているという指摘があります。
 日米合同委員会というのは、米軍人と各省庁の官房長、局長クラスの官僚からなるもので、在日米軍に関する取り決めをする実務者会議のことです。メンバーがどのように選ばれるのかはわかりませんが、軍事には疎い官僚たちが、米軍人たちに主導権を握られて、米軍のやりたい放題を生み出していることは間違いないようです。

 オスプレイが横田基地に正式配備された10月以降、首都圏の危険性は大幅に増大しました、何しろオスプレイの事故率は、他の機種の41倍だというのですから。
 首相官邸でなくても、六本木周辺には重要な施設があります。重要施設でなくても、民間の住宅であっても同じです。また、六本木周辺でなくても他の地域でも同じです。
 万が一にでも事故があったら、政府は米軍に対して毅然とした態度をとれるよう、きちんと法整備しておいてほしい。想定外だったなどと、オタオタしてもらっては困ります。
 国内の日本国民を守れずして、安全保障などと言ってもらいたくありません。

 本当に、この状況は変えられないのでしょうか。
 日本はアメリカに守ってもらっているのだからと、我慢しなくてはならないのでしょうか。


 アメリカ公文書では、日本の防衛は“日本の責任”


 アメリカが駐留しているのは日本の防衛のため、と多くの日本人は考えています。
 しかし、それはどうも違うようなのです。

 国際ジャーナリストの春名幹男氏や、沖縄国際大学大学院の前泊博盛教授らのアメリカの公文書調査により、そのことがだんだんはっきりしてきました。
 秘密主義の日本と違って、情報公開の進んでいるアメリカでは、時期が来ると公文書をきちんと公開します。それらを調査すると、その内容は日本政府が説明してきたこととは、だいぶ違っているというのです。
 
 公開された1971年のアメリカの機密文書には、
 「在日米軍は日本を守るためには駐留してはいない。日本の防衛は、日本の責任である」
との記述があるといいます。

 また、安保法制決議の根拠となった2015年の日米新ガイドラインの原文には、
 「日本の防衛には自衛隊が主たる責任(Primary responsiblity)を持つ」
 つまり、日本が武力攻撃を受けた際、責任をもって防衛をするのは自衛隊である、と明記されているそうです。米軍の任務は「あくまで自衛隊を補足するのみ」と書かれており、しかもそこに「かもしれない」という意味の「may」という単語を使っているそうです。
 その原文を外務省は、積極的に日本防衛にかかわるという印象が強くなるよう、随所を作為的に翻訳していると春名氏は指摘し、その理由は、安保法制を可決しやすくするためであったと推測しています。


 米軍が日本に駐留している理由


 確かに、駐留する米軍には、日本を積極的に守るという姿勢は感じられません。本当に日本を守るということなら、もっと日本人の尊厳を守ってしかるべきですから。

 では、積極的に日本を守るという意思がないのなら、米軍は何のために日本に駐留しているのでしょうか。日本に住むアメリカ人、リラン・バクレー氏が作った映画「ザ・思いやりⅡ」の中に、その一端が見えます。

 バクレー氏が青森県の三沢基地で取材した爆撃機のパイロットは、シリアから帰ってきたところだと答えています。ちょうどシリア攻撃があったころです。日本は、米軍の世界戦略の前線基地になっていると、氏は訴えているように思います。「日本人よ、早く気づきなさいよ」と。

 私たちは、「アメリカが守ってくれている」という思い込み(願望?)を捨てて、もっと事実に目を向ける必要があります。
 その事実をもとに、しっかりとアメリカに向かう姿勢を示す必要があると思います。







  

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