2018年2月2日金曜日

28 適材適所

 確定申告が2月16日から始まるにあたり、立憲民主党の枝野代表が、先月23日の衆院予算委員会で国税庁のトップである佐川宣寿長官の更迭を要求した。しかし首相は、佐川氏を国税庁長官に任じた理由を「適材適所」と答え、更迭を拒否した。

 佐川宣寿氏とは、森友学園問題で、国有地代金8億円値引きの交渉記録は破棄したと繰り返し答弁した、かの人である。(値引きが不当なものであったことは、会計検査院の調査により、ほぼ明らかになった。また、契約途中での交渉記録の破棄も、ルール上問題ありと指摘されている。)
 その人を国税庁長官に任じた理由が、「適材適所」だというのである。

 「適材適所」とは辞書によれば、「その人の能力・性質によくあてはまる地位・任務につける」とある。
 トップの条件については多くの人が語っているが、例えば船井総研の創業者船井幸雄氏の言葉に次のようなものがある。
 「トップの器量以上に組織体は大きくならないし、成長もしない」
 「トップ自らが人材となる努力を惜しまぬこと。そうすれば彼ら(部下)は自然とトップをまねるようになり、人材も育つ」

 「適材」をトップにいただいた国税庁の職員たちは、確定申告を控えて鬱々としているらしい。納税者にたちに「しっかり領収書をそろえて」と言えば、「お宅のトップを棚に上げて、えらそうに言うな」とか「8億はうやむやにするくせに、こんな僅かな金額にはうるさいんだな」などと納税者の怒りをかい、対応に苦慮することが明白だからである。

 首相は本当に、国税庁長官として佐川氏を適材と考えたのであろうか。
 国民の70%ほどが森友学園問題についての説明は不十分とみているのである。その当事者の佐川氏をトップに据えれば、国民の怒りをかうのも、国税庁に働く人々が困惑するのも目に見えていたはずだ。

 佐川氏は、税理士業界紙の新春対談で「ささいな問題でも対応を誤れば信頼を失う」「納税者の皆様の理解と信頼を得て、適正な申告・納税を確保していく」と語ったそうだ。
 しかしこの言葉は、納税者にも国税庁の職員たちにも反発こそあれ、響くことはないだろう。

 国税庁、苦難の1カ月がもうすぐ始まる。
 

27 どこかの国によく似ている・・・ファシズムの初期兆候

 下記の14項目は、米国のワシントンD.C.にある「ホロコースト記念博物館」の“Early Warning Sign of Facism”(ファシズムの初期兆候)と題された展示ポスターに書かれたものであるという。

 1.強力かつ継続的なナショナリズム(Powerful and Continuing Nationalism)
 2.人権の蔑視(Disdain for Human Rights)
 3.団結させるための敵の設定(Identification of Enemies as a Unifying Cause)
 4.軍事の最優先(Supremacy of the Military)
 5.はびこる性差別(Rampant Sexism)
 6.支配されたマスメディア(Contorolled Mass Media)
 7.国家安全保障への執着(Obsession with National Security)
 8.宗教と政治の統合(Religion and Govemment Intertwined)
 9.企業の力の保護(Corporate Power Protected)
10.労働者の抑圧(Labor Power Suppressed)
11.知性や芸術の蔑視(Disdain for Intellectuals and Arts)
12.刑罰強化への執着(Obsession with Crime and Punishment)
13.身びいきや汚職の蔓延(Rampant Cronyism and Corruption)
14.不正な選挙(Fraudulrnt Election)

 この14項目は、アメリカの政治学者ローレンス・ブリット氏が2003年に発表した「Fascism Anyone?」という論文からの抜粋だそうだ。
  ヒトラー(ドイツ)、ムッソリーニ(イタリア)、フランコ(スペイン)、
  サラザール(ポルトガル)、パパドロス(ギリシア)、
  ピノチェト(チリ)、スハルト(インドネシア)
といった歴史上に実在したファシズム体制を分析して抽出した、共通する特徴だという。
 「ファシズムの初期兆候」というより、「ファシズムそのものの特徴」を示したものと考えた方がよいという指摘もある。

 さて、私は、この14項目については、遅ればせながら弁護士の伊藤真さん(法学館法律事務所)の講演会で聞き知ったのであるが、14項目を順番に聞いていくにしたがって、何やら、極めて身近に思い当たる政権が浮かび上がってきたのである。
 すでに多くの人々が同じ思いでいるようで、ネット上でも話題になっている。
 アメリカでも、トランプ政権に当てはまると問題にされているという。

 こうした兆候を、国民の多くが具体的に感じ取って、それに対抗する姿勢を見せなければ、いつの間にかファシズム体制に移行してしまう。歴史にそうした例がいくつも示されている。
 民主的な手続きを踏んでいるからといって安心できるものではない。ヒトラーのナチス政権だって選挙により国民に選ばれたのだ。
 現政権には、その手口をまねたらよいと公言してはばからない政治家がいる。
 昨年10月の選挙だって、野党が要求した臨時国会、憲法で保障されているところのその臨時国会を、何一つ審議しないままに解散。まさに上記の第14項を地で行っている。
 この憲法違反さえ疑われるような選挙で、その政権を圧倒的に勝たせてしまう国民であってはいけないと思う。

 次の選挙までには2年ほどある。
 我々国民はファシズムを寄せ付けぬ力を持たねばならない。