2016年10月20日木曜日

5. 新座発、東京大停電


1012日午後、東京都区部で約58万戸にのぼる大規模な停電が発生した。原因は、埼玉県新座市にある東京電力の送電設備に火災が発生したこと。通気口から吐きだされる黒煙と、消防隊が消火に当たる様子がTVで長々と放送されたため、家人や遠くに住む親族・知人から心配の電話やメールがいくつもあった。

ところが、新座の私たちの研究室のあるこのマンションには何の影響もなく、火事のこともそれらの電話で知ったくらいである。火事の現場は新座市の中心部で、研究室より東北方向に5キロぐらい離れたところ。免許更新に行く新座警察署の近くと判明したので、マンション(7階建て6階部分)の廊下に出てそちらの方向を見てみると、太く真っ黒な煙がどんどんのぼってくる様子が観察できた。


 
 

火事はその日の深夜まで続いたようだが、送電はいろいろなルートからできるようになっており、川口市の変電所などから供給するよう切り替えたため、停電そのものは概ね20分~1時間で復旧した。
 しかし、この停電による大都市東京の交通網は相当に乱れた。西武線の完全復旧はその日の午後9時ごろ、9万人の足に影響が出た。また新宿区、豊島区、練馬区、港区では約200箇所の信号機が停止、出会いがしらの事故も発生したという。
 

東京都に勝るとも劣らない大都会ニューヨークでは、大規模停電が度々起きている。1965年13時間、1977年27時間、そして2003年は43時間。原因は、発電所への落雷、送電線業務の分社化によるメンテナンスの不備などである。

1977年の27時間の大停電を経験したある日本人は、今回の東京大停電について「10分で復旧したことが驚き」と語り、日本の送電システムの素晴らしさについて評価していたが、わずか1ルートの送電線が使えなくなったことで、このような混乱が起きることについては、災害大国日本に住むものには重要な問題として認識されなければならないと、私は思う。

 

それは、日本が世界に侃たる災害列島だということからである。特に心配なのは大地震である。大地震が起これば、必ずといってよいほど停電が発生する。1週間、時には数週間続く例もある。交通や、照明ばかりでなく、現代の日本人の生活は、余りにも電気に依存している。電気・ガス・水道などと言うが、実はガスも水道も使うには電気がいるのだ。給水にモータが欠かせないマンションでは、水が出なくなる。飲み水にもトイレにも困ることになる。もちろん、煮炊きもできなくなる。

また、都市部では自分たちが放出する熱(自動車、冷暖房、炊事等々)でヒートアイランド現象を作り出している。酷暑の続く夏場に停電などが起これば、温度調節ができずに、何人が熱中症でなくなることだろうか。
大地震が起これば、あちらこちらで災害が発生し、交通網も遮断されるので、そう簡単に救助や災害の復旧は行われないと見なければならない。電話も使えなくなるし、携帯の電源もじきに切れ、外部への連絡もままならなくなる。考えるだに恐ろしいことだ。
 
大地震はいつ来るのかわからない。首都圏では、30年以内に大地震が発生する確率は70%と言われている。いつ来てもおかしくないとさえ言われている。しかし、そのことに対して果たして対応できているのか。
 
今回の新座発大停電は、そういった意味で、貴重な警鐘であった。
わが町わが県の行政がいかに災害に強い生活システムを構築していくかを見張ると共に、自分自身の生活における電気の依存度を下げる工夫をしたいと思う。
 
 * * * * *
 
この新座発大停電で、電気がどう送られているのかを知ったのは、収穫であった。
新座市内の送電線事故であったにもかかわらず、なぜ、同じ新座市にある我が研究室には、何の影響もなかったのか。
だいたい火事は新座変電所の施設で発生したというが、火事の発生した周辺にはそのような施設はないではないか。そもそも新座変電所というのはどこにあるのか?
そして、そこから、電気がどう送られているのか?
(第一、新座市に住み新座市で仕事をしながら、新座変電所の存在を知らなかった!)
 
そこですぐさま、ネット上に何か情報はないかと調べてみた。TVや、新聞にはまだ情報は出ておらず、東京電力関係のサイトからもそうした情報は得られなかった。
しかし、ネットユーザーには自分の持つ情報を惜しげもなく提供してくれる方々がいるので、徐々に見えるようになっていった。
 
まず、新座変電所の位置。
これは、《塔MAP(あの塔を忘れない)》というサイトにお世話になった。
 
そして、新座変電所からの送電ルート。
これは、たわたわさんのページによって解明された。
 
こうした人々は、別に、首都圏の防災システムについての問題意識からこうした情報を提供しているわけではなく、「鉄塔が好き」「送電線が好き」「電車と電線が好き」というところから行動を起こしているのだが、その情報を整理すると、都市への送電システムが明らかになってくる。(ありがたいことだ!)
 各ルートに問題が発生すれば、そのルートを遮断して別のルートから電気を送るようになっていることも今回わかった。首都圏に壮大なる電気回路が張り巡らされているのだという実感がわいた。
 
 自分が住んでいる地域で、自分の生活がどのように成り立っているのか、それを支えるシステムがどのようになっているのか、つかんでおかなければならないと思う。
そのうえで、システムに問題点はないのか、どこに脆弱性があるのか、それを補う手立てはあるのかが考えられる。
最近は予想もしない災害が、頻繁といってよいほどに起きている。災害大国日本に住むものの覚悟として、そういうことを考えておかなければならないと思うが、その一つ一つがなかなか一筋縄ではいかない問題ばかりで、頭の痛いことである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 
 

2016年10月19日水曜日

4. もし、私の住む町が沖縄だったら

夫の知り合いから、“拡散希望”で、URL付きのメールが届きました。
URLをクリックすると、そこには次のような文が・・・・・・

  東村山では、子どもや女性は夜中にコンビニには行きません。
  酔っぱらった米兵に襲われるからです。
  ここにはたくさんの米軍基地があり、
  たまに米軍機が落ちて、住宅を壊し、市民の命を奪います。
  市長が抗議しても、国は知らん顔。
  トトロの森が新しい米軍基地の候補地になり、
  その付近の学校も、保育園も、田中さんの有機農業の畑も、
  ぜ~んぶ強制移動を迫られています。
  田中さんたち東村山市民は、住民投票で「基地NO!」を可決。
  選挙で市民派の議員を当選させ、訴訟を起こしました。
  「なぜ、東村山ばかりに米軍基地があるのか」
  怒りに燃え、接収された土地のフェンスの前に座り込む市民に対し、
  国は機動隊を出動させました。
 
東村山は、ここ新座からは数キロ、ほとんど隣町と言ってもよいところです。
えっ!? いつから? そりゃ大変だ。あわてものの夫は青くなりました。
落ち着いて! タイトルをよく見て!
「10月のテーマ:もし、東村山が沖縄だったら??」とあります。
東村山の市民グループ(デモクラシーCafe@東村山)が開催したデモカフェの案内文でした。
次の文が続いています。

  こんなことが沖縄で起きています。
  なぜこんなことが起こるのか、一緒に考えてみませんか?


 先月16日、翁長知事が取り消した辺野古の埋め立て承認を巡り、国が沖縄県を相手に起こした訴訟で、福岡高裁那覇支部は国の訴えを認め、沖縄県が敗訴しました。
 「え~、そうなの。沖縄がかわいそうすぎるよね」と、夫と二人で怒りました。
 「代替基地は辺野古しかないとは何だ! 政府の言い分をそのまま受け売りじゃないか。判事は自分で調べたのか!」
 「この判決文を書かせるために、政府寄りの判事を赴任させたという噂があるわよ」

 沖縄敗訴のニュースは、我が家でとっている新聞、我々が見ているTVのニュース番組でも取り上げられましたが、それほど大きな扱いではなく、それも1日で収束してしまいました。毎日のように取り上げられる豊洲市場問題、オリンピック会場問題や、微に入り細に入り伝えられる凶悪犯罪の手口などと比較すると、小さな問題として片づけられたという感じです。
 沖縄の問題は、本土では大きな問題にはなりません。遠く離れた、それも海を隔てた島での話。身近な問題として考えられず、また自分の身に降りかかることでもないと思っているからでしょう。

 沖縄県にだけ負担させられた、国からの重い重い荷物。
 それは何と言っても不当です。
 沖縄県民も、同じ日本国民として幸福を追求する権利があるはずです。
 どういう解決方法があるか、なかなか難しい問題ですが、沖縄の問題を日本国民全体の問題として共有する必要があると思います。
 そのためには、まず、沖縄の痛みを、自分の痛みとして感じる努力をしよう。
 デモクラシーCafe@東村山の企画は、沖縄問題を自分の問題としてとらえるための、素晴らしいアイディアだと思います。

 私も、この新座で考えてみようと思いました。
 皆さんもやってみませんか?

 

 
 

3. 「断じて許さない!」でよいのか

 聞くたびに気になる言葉がある。
 「断じて許すことはできない。強く抗議します」という言葉だ。
 9月5日、北朝鮮が日本の排他的経済水域内に3発のミサイルを撃ち込んだということに対する日本政府がこの言葉で抗議した。その前に北朝鮮が洋上からミサイルを発射した際(8/3)、さらに遡って6月22日のミサイル発射の際にも、この言葉を聞いた。安倍首相の口から聞くことが最も多い。
 そしてこの言葉には、たいてい我が国の、あるいは国際的な「安全保障上に重大な脅威」ということばが組み合わされている。
 この一連の言葉には、いったいどういう効果があるのかと考えてしまう。

 北朝鮮の行為を抑止するという意味での発言と考えているのなら、まず、それは逆効果だと言わざるを得ない。それは、ごく一般的な言葉に置き換えて考えてみると、よくわかる。
 相手のとった行為に対して、「それは私たちの生命を脅かす危険な行為だ。だから絶対に反対しする」と言っているのである。相手が、脅す目的でやっている行為に対して、その効果があったと言っていることになる。相手は「してやったり」と思うだけのことである。
 いくら強い口調で「断じて許さない」と言ってみたところで、何の効果もない。単なる強がりにしかならない

 一方、韓国政府は今回のミサイル発射について、「国際的緊張を高めるだけで、何の効果もない」というコメントを出していた。北朝鮮に対して「無駄なことはやめた方がよい」という忠告とも思われるメッセージであった。韓国にとって北朝鮮は、同朋の国であるから、そうした発言になるのかもしれないが、これはなかなか良い感じのメッセージだと感じた。日本も、この方向でメッセージを出すのがよいのではないか。

 北朝鮮に対して「ミサイル発射で脅すというのは、あなたたちの国にとって得策ではない」ということ、「国際協調の中で生きていくべきだ」ということ、「このままあなたたちがこのような行動をとり続けるのなら、世界の中で孤立し、未来を失うだけだ」ということを伝えるのである。
 「かつての我が国の失敗を振り返って、心から忠告する」と言えれば、さらに効果的だと思う。

                                 (平和国家日本からのメッセージを考える)