2017年9月4日月曜日

22.Jアラートが発令された日


■Jアラート発令


 8月29日(火)午前5:58、北朝鮮がミサイルを発射。
 ミサイルは日本の上空を通過し、襟裳岬東方約1200㎞の公海上に落下した。
 この事態に対して、日本政府は発射4分後の6:02に12都道府県にJアラート(全国瞬時警報システム)を発令。
 北朝鮮によるミサイル発射を伝え、屋内退避等の指示を出した。
 Jアラートが発令されると、各自治体では「国民保護サイレン」が鳴り響き、携帯電話には「緊急速報」が配信される。
 またTV局は、Jアラートの発令を受けて、それに対応した放送に切り替える。
 我が家のテレビは急に黒い画面に変わり、下のような画面がしばらく続いた。


 
  「発射から何分たってるんだ? 今どこにいるんだ」
 「北朝鮮だってバカじゃない、日本を攻撃するわけないでしょ」
 「じゃあなんだ、この放送は・・・」
 「ここ(埼玉)は入ってないわね」
 「長野が入っているのに、どうしてだ。関東は入っていない・・・」
 何もわからず、したがって何もせずに10分余りが過ぎた。
 「(ミサイルは)もう落ちたよな」とつぶやく家人。
 TVからはまだ日本のどこかに着弾したという報道はされていない。


首相の会見に???

  Jアラート発令後20分ほどたって、首相は官邸で会見。次のような事柄を述べた。
 「北朝鮮が我が国にミサイルを発射し」「我が国の上空を通過した模様」「ただちに情報収集・分析を行う」
 しかし、1時間半後の2度目の会見は少しニュアンスが違っていた。
 首相は「ミサイルについては発射直後からすべて把握していた。そして万全の態勢をとった」と述べた。
 えっ、そうなの? ということは、通過するだけだと知っていたということだよね。
 それならなぜ、Jアラートを発動したのよ。
 通過コースの下の数県ならともかく、何百キロも離れている県には必要ないだろ!


Jアラート発令の意味はどこに?

 Jアラートの発令により、新幹線や在来線は止まり、休校した小・中学校もあったという。
 Jアラート発令について聞かれた地域の人々は、多くが「どうしたらよいかわからなかった」「不安だった」と答えていた。
 発動地域以外でも、TVではこの問題にかなりの時間を割いて報道したため、不安がかきたてられた人は多かっただろうと思う。

 ミサイルによる災害を防ぐ意味での効果はどこまであったのか。
 地面に伏せろとか、屋内に入って窓から離れろと言った指示。
 これは多くの専門家が前時代的だと指摘。
 ミサイルから逃げるならシェルターとか、頑丈な建物の地下室でないととダメと指摘する専門家もいる。

 発射してから4分後というのがまた微妙だ。
 Jアラートの警報音を聴き、携帯の指示画面を見てから、内容を読み取り行動に移るまでの間にどれだけかかるか。おそらく1分やそこいらはかかるのではないか。つまり、発射後5分になる。
 その時点でミサイルはどこにいるのだろう。
 対応は間に合うのだろうか。
 (後で調べたところ、発射位置、目標地がどこかにより違いがあるが、北朝鮮から日本には4~10分の間に着弾するということだった。)

 不安感・恐怖をあおるのが目的だったのではと勘繰る向きもある。
 「北朝鮮は怖い国だ → それに備える防衛体制が必要だ → 防衛予算の増大はやむなし」と国民に思わせるために使っているのだという。
 たしかに、着弾する恐れはなかったというのに、はるか遠くの県にまで発動したのなら、それもあながちウソとは言い切れない。


日本政府はその日の未明に把握していた?

 ミサイル発射については、政府は、その日の未明のうちに把握していたという報道があった。
 アメリカから連絡を受けていたというのだ。
 ならば、なぜその時点で国民に知らされなかったのか。
 その日その時間、落下地点の近くで操業していた漁船があったという。被弾する恐れがあったのだ。把握していたのなら、出港するなという指示は出せなかったのか。
 今後の対応に不安が残る。


トランプ大統領とすべて一致、というのが怖い

 29日以降、安倍首相はトランプ大統領と何回も電話会談を重ねている。
 そのたびに「考え方はすべて一致している」という報道がなされている。
 今回もさっそく話し合わいが行われ「制裁強化」ということで一致したという。
 トランプ大統領は感情的な言動が多い。そして言葉が過激だ。
(北朝鮮は)世界が見たこともないような炎と怒りに直面するだろう」などとツイッターで発言する。
 そのような人と考えがすべて一致するということが怖い。

 

■日本の役割は?

 現段階では、ミサイルに関しては多分Jアラートは役に立たない。間に合わない。

 ミサイル迎撃等の防衛対策の必要性を主張する輩もいるが、軍事的な対応はばかげている。第一、北朝鮮は、日本を攻撃するミサイルをすでに200発もっており、すでに50発同時に発射する体制を備えているという。
 しかし、それを使ったら自分の国も終わりだということを、北朝鮮もわかっているはずだ。どこの国も失うものばかりだ。それは皆わかっているはずだ。

 それよりも、この状況の出口を探す必要があるのではないか。
 「最も強い言葉で抗議する」「断じて許さない」と北朝鮮を敵視し、制裁ばかりを主張して何になるというのか。
 北朝鮮は現体制を維持するためにアメリカと交渉したいのだ。
 いくら抗議しようと、いくら許さないと言おうと、効果は全くない。
 挑発はエスカレートするばかりだ。

 北朝鮮をこの負のスパイラルから脱出させるために、日本政府には、周辺国、関係国への真摯な働きかけをしてもらいたい。

 自分の国の利害だけでなく、周辺国との関係修復も含めた働きかけを。
 それが70余年前に判断を誤り大失敗をした国の役目ではないか。
 





 






 
 
 
 
 
 
 

2017年9月1日金曜日

21.原発は時代遅れ―世界に逆行する日本


 これが本当なら、日本のエネルギー政策は全く逆行している。
 「これ」というのは、世界のエネルギー政策の方向と、その実態である。
 

 

世界の潮流は自然エネルギー化

 
 世界は、つまり風力、太陽光、地熱、バイオマスといった自然エネルギーへの転換政策をとっている。そして、それはものすごい勢いで進んでいるという。
 
 2010年頃から世界の自然エネルギー発電設備の建設は増加の傾向にあったが、2012年以降それは急激な増加の状況を示している。それは正に驚きの急上昇。
  2016年末で、発電設備容量としては、風力は原発を超え、太陽光もこの12年のうちには超える勢いだ。(図1)

 自然エネルギーによる発電は、必ずしも24時間連続して稼働しない。したがって、それぞれの実際の発電量はまだ原発の3割ほどであるが、風力、太陽光、地熱、水力それらを総合すると、世界の自然エネルギーによる発電量は既に原発を超えているのだという。(図2)


  図1 2016年末における発電設備容量
 


  図2 自然エネルギーの発電容量はすでに原発を越えている

 
 
エネルギー供給の自然エネルギー化の方向は加速度的に進んでおり、設備建設は飛躍的に増加している。既にエネルギー供給の100%に近い国も出てきており、世界全体ではもう石油依存、原発依存から完全に脱する見通しがついている。そう遠くない未来に、100%自然エネルギーの社会が実現する見通しであるというのである。

なおかつ、この自然エネルギー化政策は、製造業、建設業、運送業など産業を複合的に発展させ、新しく雇用を生み出し、実施している自治体や経営者に確実な利益を生み出すというおまけもあるという。

良いことづくめで「本当だろうか?」と疑いを持ってしまいそうだが、どうもこれは本当らしいのだ。

 

映画「日本と再生」

この情報の出所は、弁護士の河合弘之氏が監督した反原発映画の3作目「日本と再生」。エネルギー学者飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)が企画・監修をしている。私はこの映画を、地元の、脱原発社会を目指して活動している会主催の上映会で見る機会を得た。
        (★なくそう原発、清瀬の会 https://twitter.com/kiyosewalk

   



    
 
 
 
世界各国の取材、実態を伴う迫力のデータ

 映画は、世界中を飛び回り、国々の発電状況やエネルギー政策の考え方についての取材を重ねて作られている。ドイツ、アイスランド、デンマーク、アラブ首長国連邦、インド、中国、ハワイ、そしてアメリカ本国・・・。その取材は、各国のエネルギー政策担当の責任者レベルにまで及び、映画の中ではそれらの人々が河合・飯田両氏のインタビューに対して発電・供給の実態について語っている。

 ドイツは、メルケル首相が2011年の福島原発事故後、いち早く脱原発、自然エネルギー化に方針転換し、現在は電力の35%ほどを自然エネルギーでまかなっているという。2022年には全原発を廃止、25年には自然エネルギー40%台というのが政府の目標だが、増加の状況から考えると目標を大きく超えそうである。日本で言われている「フランスの原子力発電に依存している」という情報は全く嘘であり、ドイツが輸入していると言われている量の大半は、ドイツの送電線を経由しているだけで、イタリアとチェコに送り出されているという。実質輸入している電力の3倍量を逆にフランスに輸出しているというのが本当のところだ。

アイスランドは自然エネルギーは地熱発電が主体で、需要のの100%を超える。デンマークは風力発電、2025年には50%を賄えるという見通し。発電設備の半分は個人(協同組合)が出資、利益が還元されているというところは大いに参考になる。

インドも自然エネルギーに舵を切っている。原発は全く考えていないという。アラブ首長国連邦では、将来の化石資源の枯渇を見据え、自然エネルギー関連のプロジェクトを急速に進めている。産業としても考えていく方向だ。

中国は、実質的に世界一の自然エネルギー大国。液晶パネルの生産など、産業としての方向も進めており、自然エネルギー発電事業の責任者は、原発を増やす計画はないと言い切る。

そしてなんとトランプ大統領の指示でパリ協定を脱退したアメリカでさえも、実は自然エネルギー化が進んでいる。各地の取り組みのほか、河合、飯田両氏は国防省にまで突撃インタビュー。環境設備担当責任者が語るところによれば、アメリカの軍隊では、すでに自然エネルギー(太陽光)を採用しており、必要量の40%ぐらいを賄っているとのことだった。
  

 

加速する自然エネルギーの拡大
 
しかしなぜ、こんなに急速に自然エネルギー化が進んだのか。
設備が増え続けるその理由はどこにあるのか。
それは自然エネルギー発電設備を製造する部品が安くなったからだという。
設備の建設は少しずつ増加してきた。それにつれて部品の製造もふえる。
たくさん製造すると、部品単価が下がり建設価格が安くなる。価格が安くなると建設が増える。
増えると部品をたくさん製造する。そうすると部品単価が下がり、建設がふえ、そしてまたといった具合で、だんだん建設のハードルが低くなり、急速に増えたのだという。
 
ではなぜ、原発から自然エネルギーへと転換したのか。
そんなことは、考えるまでもないことだ。
 
天候に左右されやすく、安定的に供給できないと言われていたが、それは設備の数が増加したことと、コンピュータ・ネットワークのおかげで融通しあう態勢が整い、解決の見通しが立ったからである。安定供給の見通しが立ち、採算がとれさえすれば、自然エネルギーの方が良いに決まっている。 
 
化石燃料発電のように空気を汚し温暖化ガスを出さず、安全で未来永劫使え、そして、原発のように10万年も残る危険な廃棄物が出ない。引き受け手のない廃棄物の最終処分地に悩む必要がないのだ。
万一、故障や事故が起きたとしても、自然エネルギーの場合は人間の手で解決し、改善していくことができる。多くの人が故郷を失うようなことにはならないのだから
 
 
自然エネルギー化で本当の意味の日本再生の道を

 
 日本では、原発のある自治体が原発の再稼働を求める。それは第一に莫大な交付金を得るため、第二は原発関連の仕事で地元に雇用を生み出したいからだ。しかし、原発で本当に地元経済は活性化するのか。

 映画では、東京電力柏崎刈羽原発が地域経済に与えた効果を、新潟日報社が様々な角度から調査した結果を紹介する。2015年「原発は必要か」というタイトルで長期にわたって連載されたものである。
 その結論は、「思ったほど人口は増えなかった。産業も全然。どういうわけか期待とはみんな逆さまになった」

 原発施設の建設はたった1回、大きな建設会社、大きな製造会社が主体となり、地元の雇用は建設期間中の短期的な雇用である。
 運転はごく少ない人数で行われ、関連する作業は保守管理だけである。そして何十年後かは廃炉になる。その間は危険な廃棄物を出し続け、廃棄物を引き受けるところはどこにもなく、安全に廃炉にする方法はいまだ模索中。そして、いったん事故が起これば・・・まさに負の産業である。

 自然エネルギーの方向に切り替えている国々では、風力、太陽光等の発電設備をつくるということを新しい産業と位置づけている。地元に密着した、地元にあった規模で作り出す新しい産業体制である。

 自然エネルギー発電の産業は、継続して製造・建設の仕事があり、運送の仕事も生まれる。そこに働く人々に対応する様々な産業も生まれる。さらに、地元が必要とする量を超えた電力を販売することでさらに利益が生まれ、それらが総合されて経済が活性化していく、そうした状況が展開していることを、映画は紹介する。

 「自然エネルギーは採算が取れない」から、もはや、「自然エネルギーはもうかる」に変わったのである。あちらこちらで、みんなが取組み、みんなが利用していくことで、採算のハードルはより低くなっていくのだ。この映画はそのことを訴える。

 自然エネルギー産業で、本当の意味での経済再生の道を考えようというのが、この映画の提案である。

 

 
世界に逆行する日本

 アジア地域においては今年、台湾・韓国が相次いで脱原発の方針を宣言した。中国・インドに次いで自然エネルギー化の道を選んだのである。
 ところが、アジアのリーダーを自負する日本は、その逆を行く。各国が自然エネルギー化の方向に転換した原因となった原発事故を起こした日本では、いったんは全原発が停止したものの、その後再稼働させていく方向にある。2017年8月現在、5基が稼働中、7基が審査合格、さらに審査中の原発が多数ある。

 これは、日本政府が原発をエネルギー計画におけるベースロード電源と考えているからだ。ドイツが脱原発を決めた直後に安倍首相は、「自然エネルギーに乏しい日本では原発や火力発電が不可欠」と語っている。


 
 
この基本計画では、2030年時点の原発比率を2022%とするなど、将来的にも活用していく考えである。原発をベースロード電源とする一方で、自然エネルギー(ここでは廃棄物エネルギー等も含む再生可能エネルギーの中に位置づけられている)については、各国に比してかなり控えめな目標になっている。
河合、飯田両氏は、アメリカでロッキーマウンテン研究所のチーフサイエンティスト、エイモリ―・ロビンス博士を訪問し取材している。博士は、エネルギー利用効率の向上と自然エネルギー利用を推進する先進的な戦略「ソフトエネルギー・パス」を提唱し世界的に注目されている人である。つい最近行われたエンパイヤステートビルの省エネ化の立役者でもあり、同ビルはエネルギー使用量とCO排出量を38%削減、年440万ドル分の省エネ効果を得られるようになったという。
映画の中でロビンス博士は、「日本はドイツの9倍の自然エネルギー発電ができる環境にある。しかし今、現実には、ドイツが日本の9倍の自然エネルギー発電をしている」と語っている。日本では、日本の地勢・自然環境が持つ発電能力の活用の態勢が整っていないというのだ。

 整っていない理由は、整えようとしないからに他ならない。整えるどころか、再生可能エネルギーの買取や送電の枠を設けたり、自然エネルギー主体の新電力の料金に、原発を持つ旧電力の廃炉費用や福島原発の賠償費用を加算するなど、新電力の伸びを抑えようとする姿勢さえ見える。世界の自然エネルギー発電産業の実態を知らないのか、知っていてあえてそれを進めないのか。

 映画には、そうした日本の状況も描かれている。悪条件の中、各地で自然エネルギー発電事業に取り組む人々の姿だ。各国が国レベルで自然エネルギー化を進めているのに対して、日本はほとんどが小さな規模での取り組みだ。民間のグループ、市や町のレベルの自治体、そして生協。取り組みを困難にする数々の規制にもめげず、安全安心なエネルギーの供給を目指して、希望を抱いて活動する人々の姿に心打たれる。


 何とか、この活動を大きくして行きたいものだ。
 活動に直接関われなくても、発電されたエネルギーを使うことで参加できる。
 私の入っている生協でも再生可能エネルギー75%以上の電気『FIT電気』を提供する事業を開始した。
 私は、今日、我が家の電気を、東電からFIT電気に切り替えるべく、その申込書を書いた。



≪参考≫

映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」
http://www.energy-democracy.jp/1843

自然エネルギー世界白書
http://www.isep.or.jp/archives/library/category/renewables-global-status-report
 

 

≪追記≫ 

 飯田哲也さんごめんなさい。飯田さんが講演の中でお使いになった資料の中の図を1枚、お断りもせず掲載してしまいました。もし、ダメということでしたら、自作のものに切り替えますのでご連絡ください。