2016年8月29日月曜日

1. 安倍さん、国民の1票は白紙委任ではありません!

 7月10日の参議院選挙の結果、与党勢力が2/3の議席を確保した。
 安倍首相は、翌11日の記者会見で、次のように述べた。
   「『アベノミクスを一層加速せよ』と、 国民の皆様から力強い信任をいただいたことに
     心からお礼を申し上げます。」
 あれれ、国民はいつそんなことを言ったの?

★世論調査が示すのは、消極的信任

次に示すのは、選挙の直前に朝日、毎日の新聞2社が実施した世論調査の結果である。
参考として、5か月ほど前に行われた日経新聞の世論調査の結果も提示した。
( )内は毎日新聞の選択肢。
 


質問項目

朝日新聞
      /

毎日新聞
     /20

日経新聞
    /28

内閣支持率 支持
         不支持

41%
   36%

42%
    39%

47%
    39%

与党が2/3以上を占めた方がよい
             (与党が増えた方がよい)

与党が2/3以上を占めない方がよい
            (野党が増えた方がよい)

36%
   

      41%

34%
   

      46%

 

アベノミクスを進めるべきだ(評価する)
                 見直すべきだ(評価しない)

28%
      55%

23%
      61%

31%
     50%

  注目すべきは、「内閣の支持率」と「与野党の議席バランスへの希望」が逆転していること。
 内閣支持ながらも野党が増加した方がよいと考えているという人が、少なからずいるということを示している。政策や政策の進め方に不満(疑問、不信、不安)があるということだ。
 特にアベノミクスについては、「進めるべき」の倍近くの人々が「見直すべき」と考えている。その割合は、6割に迫っており、これは「経済政策は不信任」と言っているのに等しい。いくら贔屓目に読み取っても、「力強い信任」「アベノミクスを一層加速せよ」とはなりえない。
 与党が2/3の議席を確保したという選挙の結果は、確かに国民が与党を信任したということを示している。しかし、それは与党の政策を無条件に支持しているということではない。世論調査からは、条件付き信任、消極的信任であるということが明らかである。

★安倍首相のメッセージは「1票の中身は問題にしない」ということ

選挙における国民の1票1票は、白紙委任ではない。1票には表現できない国民の考えや願いをくみ取るものが世論調査である。それを受け止め、政策に反映させていくのが、誠実な政治家の姿勢だ。
 しかし、現政権は1票の中身は問題にしない。4割支持の1票であろうと、5割支持の1票であろうと、1票は1票。すべて白紙委任と解釈する。世論調査で明らかになった国民の声など知らないよ。安倍首相のメッセージはそういう意味だろう。

★現代における、国民の最大の課題

自身が約束したことを実現できなかった理由は「野党の非協力」と「新しい判断」と言い抜け、選挙に勝った途端に、選挙中は争点にもしなかったことをどんどん推し進めていく。私たち国民は過去2回の選挙とその後の経過から、現政権の不誠実さは十分承知しているはずだった。にもかかわらず、この7月の参院選で以前にもまして大きな力を与えてしまった。国民は1票の投じ方を誤ったのである。
 力はあるが不誠実である、また自身の思い込みが強すぎて他の意見を入れないといった政治家が跋扈する時代にあっては、国民にとっての最大の学習課題は、「政治家を動かす力をいかにして持つか」ということなのではないか。ここしばらくは、JADECの課題としても取り上げていきたい。