2017年8月4日金曜日

19.共謀罪、277の罪とは?


 5月15日に成立してしまった共謀罪法、マスコミやネットでは多くの人々の懸念が紹介されている。
 しかし、いまひとつ実像が見えてこない。取り締まられる側(一般人も可能性があるということなので)としては、まず、法律の実像をとらえる必要があると思い、対象となる277の罪について調べてみた。
 
 

★大きくは5つに分類される


 277の罪については、法務省が大きく次の5つに分類し、新聞各紙がそれを報道している。
   1.テロの実行に関する犯罪   110
   2.薬物に関する犯罪       29
   3.人身に関する搾取犯罪     28
   4.その他資金源犯罪      101
   5.司法妨害に関する犯罪      9
        計          277

 しかし、それぞれの分類の中は、犯罪名がただ列挙されているだけで、しかも類型が違うものが隣り合って並んでいたりするので、頭の中が整理されにくい。
 そこで、5分類のそれぞれの罪を、さらに罪の類型で分類し、並べなおしてみた。次の5つの表がそれである。

 






 




★共謀罪法は、テロ防止対策になるのか?



 この表に示された277の罪、これについて共謀(2人以上で相談)することを取り締まろうというのが、共謀罪法だということである。
 この法律は、確か、テロ対策として不可欠なものだというのが政府の主張であった。首相が、国会で何度もそう発言していたことを記憶している。

 277の罪を分類整理した結果、まず私の頭に浮かんだのは、「政府は、本当にテロ防止を真剣に考えているのか?」という疑問だった。
 共謀罪法がもたらす「監視社会」「密告社会」の到来への心配の前に、この法律の施行に、もし警察がまじめに取り組んだとしたら、逆にテロは防げないのではないかという懸念が浮かんだのである。

共謀罪法には、昨今の国際的テロ活動を分析・検討し、その防止策として新しく必要と考えられたものが何もない。というのは、それは全て取締の対象となる行動は、既遂の場合に対応する法律がすでにあるものだからである。テロ活動は、日本がこれまで対応してきた犯罪活動の範囲でしか行われないと、政府は考えているのだろうか。

 その一方で、「これがないとオリンピックを安心して開けない」と声高に主張する根拠にはなるとは思えないものがたくさんある。逆に、こんなことまで捜査の対象にしていたのでは、肝心のテロ活動を見逃してしまうのではないかと思えるようなものがたくさんある。

例えば、「2.薬剤に関する犯罪」における大麻の栽培とかケシの栽培。
「3.人身に対する搾取犯罪」における強制わいせつ、児童淫行、児童ポルノ、売春。
「4.資金源犯罪」についてはパレルモ条約批准のためには必要なのかもしれないが、テロ対策と位置づけるものでもないような気がする。例えば、会社や株主の権利を危うくする行為に分類したものなどは、テロ対策と直接結びつくのだろうか。

★現実のテロの分析と、それへの対応のしかたの研究こそ急務ではないか


 諸外国で実行されているテロは、圧倒的に自爆テロ。そしてテロリストの圧倒的多数は、その国における差別や不平等な生活に不満をいだく移民、それに同調した者たち、もしくは難民の中に紛れたISの戦闘員である。
 多くの観光客がやってくるオリンピックが危ないと思うのは、観光客に紛れてそうしたテロリストがやってくる可能性があるからだろう。

 とするなら、共謀罪法はとても有効とは思えない。
 法律よりも必要なのは、いかにして爆発物を所持しているものを発見するか、また発見した時に爆発にまで至らせない方法、被害を最小限度に抑える方法、そうした技術の開発や訓練ではないのか。

 そして、観光客に紛れて入国する可能性のあるテロリストを入国させない、出国させないという入出国の管理のてこ入れも必要ではないか。6月に成田空港で起きたLCC乗客の入国審査素通り事件のようなことでは、目も当てられない。
 加えて空より心配なのが海。一気に何千人と上陸する豪華客船。貨物船でやってくる乗組員。四方を海で囲まれた日本は、荷物に紛れて入ってくるヒアリのように、どこからでもテロリストが侵入してくる状態にある。
 
 日本政府は、共謀罪を本気でテロ対策と考えているのだろうか。
 そうであるなら、その考えはあまりにも的外れで、そうでないなら、別の魂胆があるとしか思えない。


 




























 

 
 

 

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