2017年6月23日金曜日

18.「共謀罪法」成立!!

 5月15日未明、参議院本会議で「共謀罪法案」が可決された。
 「共謀罪法案」、正式には「組織的犯罪処罰法改正案」といい、犯罪を計画段階で処罰できるようにするものである。

★練られていない法案だったのに・・・


 この法案に対する国内世論は、賛成・反対ともに20数%で拮抗していた。残りの50%以上の人は「どちらともいえない」という答えだが、本音は内容がよくわからないというところではなかったか。
 一般国民どころか、法務大臣が野党の質問に対してあいまいな答弁をしたり、答弁内容が二転三転したり、答弁しようとしたところを首相に遮られ代わりに法務省の官僚が答えたり、果ては「私の頭では対応できない」と発言したり。また首相の発言も、法務省の官僚の見解と食い違っているというありさまだった。
 法律を通そうとする責任者たちの間でも、共通認識がない(内容が理解されていない?)、よく練られていない法案と思われる状況が露呈していた。

 首相は、この条約はパレルモ条約(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約)を批准するために必要、またテロ対策に不可欠で、これがないと東京オリンピックは開催できないと何度も言っていた。
 しかし、その一方で、多くの専門家たちが、「そこにはウソがある」と反論している。

★パレルモ条約批准に「共謀罪」は必要ない・・・第1のウソ


 日本の法律は、すでにパレルモ条約を批准するのに十分な条件が整っていると多くの学者や弁護士たちが言っている。そして何より、当のパレルモ条約の立案者であるニコス・バッサス教授(米ノースウェスト大学)が、東京新聞やテレビ朝日のインタビューに答えて、次のように言っている。
 
 「パレルモ条約は経済的利益や物質的利益を目的とする犯罪行為に対応するもの」「組織化された犯罪行為と闘うためのもの」であって、テロのように思想に由来する犯罪に対するものではない。
 そして、条約の批准については、「批准の審査をする機関はなく」「条件を満たしていなくても各国が批准することが可能だ」、さらに「日本は対応する法律が十分整備されている」と語っている。

 したがって、パレルモ条約を批准するには、まず、政府が国会に「パレルモ条約に批准したいんですけど」と提案すれば、それに反対している議員はいないのだから、すぐ議決されるはずで、それを受けて、政府代表が国連本部に行って批准書にサインすればすぐ批准されるということなのである。

 つまり、パレルモ条約の批准には、共謀罪法案の成立は必要なかったということである。
 政府は、「ウソ」をついていたことになる。


★「共謀罪」はテロ対策にはならない・・・第2のウソ


 バッサス教授はテロ対策についても言及している。これは2002年の9.11事件をきっかけとして国際懸賞に基づいた決議をしていて、「主要なテロ対策条約はすでに批准され法整備も完了」しているという。そして、「東京オリンピックのようなイベントの開催を脅かすようなテロなどの犯罪に対しては、現在の(日本の)法体系で対応できないものは見当たらない」と語っている。
 東京にオリンピックをを招致した際、安倍首相は「東京は世界一安全な都市」と名言したもには、そうした背景もあったからだと思われる。東京が世界一安全な都市にランキングされたのもつい昨年のことである。

 その東京が、いつ共謀罪法案が通らなければオリンピックを開催できないほど危険な状況になったというのは、何をもって言うのだろう。現在各国で発生しているテロ事件をとらえて、心配しているのか。10年以上も前の法整備では間に合わないという心配なのだろうか、
 
 しかし、その意味では、「共謀罪」だって役に立たないと、専門家は言う。
 共謀罪は、既に犯罪として法律で定められている277の罪を、計画の段階で犯罪とするという法案でしかなく、その277の罪の内容は、現在世界の各国で起きているテロの方法やテロに至った原因を研究してつくられたものではないからだという。

 となると、東京オリンピックのためのテロ対策というのも、これもどうやらウソだということになる。


★日本の、そして世界の識者たちが心配する「共謀罪」


 この共謀罪は、「表現の自由とプライバシーの権利を脅かす」として、国連人権理事会の特別報告者や世界ペンクラブ会長を始めとする内外の識者の懸念の声が上がっている。
 しかし、私を含めて多くの人が、今一つその懸念が実感を持ってとらえられていないのではないだろうか。だから、世論調査でも賛成・反対が拮抗しているし、半数以上がどちらともいえないと答えているのだろう。反対運動に盛り上がりが見えないのはそのためではないか。
 
 識者たちは、なぜ「共謀罪」が危険な法案であると言えるのか。
 私たちも、その懸念を共有できるようにならなくてはならない。
 また、内容をしっかりつかんで、こんなものじゃ「テロ対策」にはならない、と政府にはっきりと抗議できるようになる必要がある。
 
 それが、成立してしまった共謀罪に対して、私たち国民がとるべき行動の第一歩だと思う。
 

 

 
 



 







 


 

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