2020年6月29日月曜日

63 マスク配布プロジェクトはなぜ実施されてしまったのか

全世帯2枚ずつのマスク配布プロジェクトは、首相が宣言した4月1日から2ヵ月半後の6月15日終了した。
しかし、このマスク配布、極めて評判が悪い。
いくつかのアンケート調査では、75~80%の人が「このマスクを使わない」と答えている。私の周辺でも、使うと言っている人はほとんどいない。


アベノマスクを使わぬ理由


第一はマスクの形状。大人には小さすぎ顎が出てしまう、話をしたりするとずり上がってきてしまう、耳が痛くなる、等々。

第二にかけられた経費。当初発表された額は466億円! たかが2枚のマスクにそんなに莫大な費用をかけるとは・・・(最終的には260億になったそうだが、それでも莫大だ。)

そして第三は、届くのが本当に遅かったこと。不良品の検品などがあったため、配布が本格的になったのは5月の半ば過ぎ。(我が家は6月3日)不織布のマスクも出回りはじめ、ネットの価格も下がり、服飾メーカーがオシャレなマスクを売り出しはじめた頃。手作りした人も多くなっていて、いまさら感が満載。


そもそもは、たんなる思いつき


この首相肝いりのプロジェクトは、最初から評判が悪かった。
「エイプリルフール?」と揶揄され、その経費の莫大さから「ばかげた計画」「もっとその費用を有効に使ってほしい」と多くの国民や野党議員から声が上がった。

にもかかわらず、この計画は強行された。途中、変色やゴミ・虫の混入など不良品が多く発見され、検品を行う必要が発生したりしたこともあって、更に評判が悪くなった。

計画の発端は、首相側近からの進言によるという。
中国に依存していたマスクが手に入らなくなり日本中がパニック状態に陥っていた頃のこと、「マスクを配ればあっという間に国民の不安はおさまる」と言われ、すぐ採用したという。
一斉休校同様、深く考えたものではなく、いわば思いつきの政策である。


効果あるプロジェクトにするための仕事をしたのか


思いつきが悪いというわけではない。
トップの思いつきを、効果ある政策に仕上げていくのが部下の仕事、官僚の仕事だろう。
国民の間で最初から疑問視されていたその形状、その調達・配布経費、それを真剣に検討したのだろうか。

候補になったマスクを実際につけて見たか。
これは大人には適さないと思わなかったのか。

466億円という試算がされたとき、これは問題だと思わなかったのか。
マスク配布宣言より前、アイリスオーヤマが、工場の一部を改修しマスク製造工場を作ることを発表していた。建設費用30億円。最終的には月1億5千万枚製造できるというその工場では100人の雇用も生まれるという。
仮に466億円をマスク工場建設につぎ込むとすれば、単純計算で30のマスク工場ができ、月45億枚のマスクが生産でき3000人の雇用が生まれることになる。
それと比較すると、マスク配布はあまりにも費用対効果が小さい・・・・
とは思わなかったのか。

また、5000万世帯に配布するには2ヵ月以上かかるという予測は立てられなかったのか。
困っているそのときに洗いのきくマスクをもらえれば、多少形状に問題があっても、ありがたいと思えたかもしれない。
しかし、そう思える期間はせいぜい2週間ぐらいだろう。1ヵ月後ではどうなのか。
まして、2カ月後に1世帯にマスク2枚をもらって国民がありがたがるわけがない。

2ヵ月以上かかるという予測がなされて、実施されたのだとしたら、余りにもお粗末な判断だ。国民が、2カ月間何も対策を打たずに、ただ嘆いていると思ったのか。

何も予測を立てずに、実施されていたのだとしたら。あまりにもずさんな計画だ。
企業でプロジェクトを計画するときの重要な仕事に、工数計算というものがある。
その仕事はどういう工程から成り立つか、どういう人材がどのぐらい必要で、どのぐらい時間がかかるかといったことを、予測し算出するものである。
プロジェクトの目的を適切に果たすためには、そうした作業が欠かせないが、このマスク配布プロジェクトでは、それがなされたのであろうか。


はだかの王様


マスク配布プロジェクト、心の中では「これは愚策だ」と思った官僚たちは結構いたのではないか。しかし問題点をきちんと指摘し、換言したものはいなかったということだ。

このマスク配布プロジェクトから私は、「はだかの王様」を連想した。
愚か者には見えないという「魔法の布」、
国民があっという間に安心するという「布マスク」。

インチキを、インチキだと言わない家来たちにとりまかれている「王様」。
子どもに裸であることを指摘され、国民から笑われて、やっと気がついた「王様」。
何だか似ている。

マスク配布のような愚策が大見得切って実施される日本。
それは、まっとうな政策が実施されていないことを象徴しているような気がする。
このままにしていては、日本は立ち行かなくなるのではないか。
われわれ選挙民は、「王様ははだかだ!」と言って、大人たちの目を覚ました子どものように、
行動を起こさなくてはならない。



































2020年6月25日木曜日

62 ため息が出るほど遅い その3

国の仕事はため息が出るほど遅い。
しかし、日本でも素早く対応したところがあった。

小さな自治体が・・・


コロナ対策としての補正予算が成立した4月30日、その日に全住民に給付金10万円を振り込んだ自治体がある。
北海道東川町と青森県西目屋村である。
また、新潟県粟島浦村は、1日遅れの5月1日に振り込んだ。
いずれも小規模な自治体だ。

予め、銀行や信用金庫に話しをつけ、そこから振り込んでもらったという。
いずれ国から自治体に対して支給されたら、町(村)が銀行や信用金庫に返済するという方式をとったというのである。

国からお金が来るのを待ってからではなく、先に配ってしまう。
すごいアイディアだ。
小さい自治体だから出来たのだ。
規模が小さいから、住民の情報は把握しやすい。
改めて調査しなくても既に情報をつかんでいたのではないか。
給付金の規模も小さいから、銀行や信用金庫も資金を動かしやすく、早く対応できた。ということではないか。

仕事の桁は小さく・・・国から自治体へ


仕事を早くするポイント、この辺にありはしないか。
規模が大きくなると、それだけ時間がかかる。
全体を調整する仕事、中央から末端への連絡業務も出て来る。
国が、小さい仕事、しかし膨大な量の仕事を、現場とは程遠い机上で計画・設計し、指令するという形が、仕事を遅くしてしまっているのではないか。

この数カ月、それぞれの自治体はかなりいろいろ考えてコロナ対策を実施したようだ。
よい成果が表れたところも少なくない。
しかし、できる範囲が狭く、予算も少ないので、苦労したようだ。
国が権限を握りすぎ、また予算を握りすぎているからだ。

何もかにも国が決めて、指令するというのではなく、
もっと自治体に予算を渡して、自治体の裁量で行なえることを増やしていく方が良いのではないか。
自治体によって、コロナの感染状態はかなり異なっているので、それぞれの状況に応じた対策をとることが出来るだろう。

第二波、第三波の流行に備えて考えてほしいことである。



2020年6月23日火曜日

61 ため息が出るほど遅い その2

国の仕事というのは、どうしてこんなに遅いのか。
コロナ対策で感じたことである。
マスクの場合は必要性の低いマスクの場合は、ただあきれていても済むが、
生活が逼迫しているものにとっての給付金は、そうはいかない。

定額給付金の場合


逼迫している人への30万円という当初の対策から、国民全員への一律10万円給付に変更されたのは、不公平ではないからということもあったが、全員一律の方が処理が速いというのが大きな理由になっていたと思う。
給付が決定したのは4月30日。
しかし、多くの国民が手にしたのは、6月になってからのようだ。

実際の給付は各自治体に委託され、行われている。
私の住む新座市からは5月半ばに連絡文書が届き、それによると、26日以降に申請の書類が送られその後1~2週間後に入金されるというということだった。実際に書類が届いたのが28日。それから申請するのだから、早くても6月半ばになるということだ。

マイナンバーカードで申請してほしいという、総務大臣からのアナウンスがあったが、システムの不備でかえって時間がかかるからと、各自治体から郵送による申し込みの要請が出るなど、笑えない話もあり、結局のところ、6月10日までに給付されたのは、全体の約40%、5000万人ほどにとどまっている。(総務省発表)

早いはずの一律定額給付でこれだ。


持続化給付金・雇用調整助成金の場合


もっと問題なのは、売り上げ減少や休業などでひっ迫している事業者に給付される持続化給付金(個人100万円、法人200万円。いずれも最高で)や雇用調整助成金。
申請手続きが難しい上、申請してもなかなか支払われないという状況が続いているようだ。

持続化給付金は、申請開始からほぼ1ヵ月たった5月末までに申請数約120万件、その3分の1ほどに給付されたという報道があった。雇用調整助成金の方は、申請数約35千件に対して約半分の17千件に支給が決定した(支給されたではない)という段階だ。
結果として多くの人々に支援金は行きわたっておらず、既に倒産に追い込まれた人々も少なくない。

なぜ、こんなに遅いのか。しかも額が少ないのか。

イギリスでは収入の8割が保障され、フランスではロックダウンが決まってから3日後にレストラン経営者に300万が振り込まれたという例が、TVニュースで紹介されていた。
これはもはや、政治の理念と発想のちがいとしか思えない。














2020年6月18日木曜日

60 ため息が出るほど遅い その1

日本の新型コロナに対する対策。
2月初めに大型クルーズ船で陽性者が確認されて以降の、4か月余りにわたるその経緯を見て感じるのは、そのトンチンカンな対応と、遅さである。
それはため息が出るほど。


布マスク配布について


6月3日、我が家のポストにプラ袋に入った布マスクが投函されていた。
これが噂のアベノマスク・・・
4月1日に、全世帯2枚ずつ届けると首相が宣言したあのマスクである。
同じマンションの友人に、汚れや黄ばみがあって返した知り合いがいると聞いていたので懸念していたが、そういうことはなかった。
しかし、いかにも小さい。
小顔ではない我々夫婦には、向いていない・・・

それに私はもう、端切れを使って布マスクを10枚も作ってしまった。
ネットで紹介されていた様々なデザインと作り方、その中から、顔にフィットする立体的なデザインを選択。型紙を作り、裁断し、そして手縫い。
守備は上々。結構満足できるものが続々とできた。(家庭科教育万歳!)
娘も、黒地と白黒の小花模様のリバーシブルの作品を「これいいね」と1枚持っていった。
だから、我が家には国からのマスクはもういらないのである。

ある調査では、75%の人がアベノマスクを使わないと答えたという。
その小ささや、平面的で周辺に隙間が出てしまうことから評判が悪いらしい。
配布に余りにも高額な予算がつぎ込まれたことも、拒否反応を生んでいるようだ。

それでもまだ、4月のうちに配られたのなら感謝されたかもしれない。
特定警戒地域13都道府県の一つであった埼玉県で配布が始まったのは、
首相宣言より1ヵ月もたった5月1日のことである。
更にそれから1ヵ月以上たって、埼玉のはずれのこの新座に届いたのだ。

5月になって、マスク不足に応えて次第にさまざまな分野の企業が、マスク製造にのり出したという報道が相次いだ。月末には早くも新しいデザイン、新しい素材の製品がつくり出されるようになり、ネット販売が始まったところもある。
また少しずつではあるが、不織布マスクがスーパーやドラッグストアーで出回り始めた。
私のように自分で作った人も少なくない。(町で結構見かける。)
だから「アベノマスクはいらない」という人も多くなった。
要するに、国の布マスクは證文の出し遅れとなったのである。

国は、このプロジェクトがどのぐらいの期間で実行できると考えていたのだろうか。
一世帯当たりマスク2枚配るなんてことは、一つ一つを見れば小さな仕事にすぎない。
しかし、5000万世帯に配るとなれば大きな量の仕事になる。

調達から配布までのプロセスを、どういう人員でどう進めるか、
具体的に想定してスケジュールを計算したのだろうか。
2枚1組にして、そこに厚労省のつくったパンフレットを組み込んでパッケージするところから、各郵便局に必要数を送り、局員が各世帯に配布するまでの具体的作業を洗い出して、工数計算する。
それが2ヵ月かかるという計算にはならなかったのか。

2ヵ月もかかることがわかっていて実施したのであれば、
国民の心理をおもんばからない愚かな計画だったと言わざるを得ないし、
ずっと短い期間でできるという計算だったのなら、
実体把握能力が極めて低かったと言わざるを得ない。

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ため息の出るほど遅かった「マスク配布プロジェクト」は、6月15日に終了した。
そもそもマスク2枚の配布なんてことは、国がやることだったのだろうか。