3月8日の4:00から、ラジオ深夜便(NHK)で語るので、聞いてほしいというものでした。
徳水さんは、東日本大震災で被災した石巻市雄勝(おがつ)小学校の教師だった方です。
雄勝小学校は17~18mの津波に襲われ、校舎や体育館が流され、下校中だった児童一人がなくなりました。助かった子どもたちも、ほとんどが家を失い、徳水さん自身も自宅を失い、奥さんのお母さんがなくなりました。
40日後、隣町の中学校の空き教室で学校は再開しましたが、児童数は卒業やら天候やらで108名から41名に激減。その上、震災の後遺症で食欲不振、活動力意欲の低下、情緒不鑑定だったといいます。文部省の指導を受けて教育委員会からは、震災前の教育課程の実施の指示が出されたそうですが、徳水さんは、この子どもたちに対する教育はそんなことでよいのかと、疑問を抱いたといいます。
震災で多くのものを失い、暮らしの環境が激変し、さまざまな課題が山積みになった生活、そうした娯共たちに必要な学びはなんだろうかと模索。その結果、「地域の人とつながり、地域の復興活動に参加する」という答えを導き出し、活動を展開したのです。
その内容の概略は、JADECニュース94号(2015/12/15)でご紹介しました。
◆石巻の小学生の“震災復興のまちづくりプラン”
http://jadec.or.jp/main/wp-content/uploads/2015/01/jnews94-20141215.pdf
ラジオ深夜便では、その過程を徳水さんが語られました。内容は、以前徳水さん自身が書かれた報告書を読んで知っていたことでしたが、本人の言葉で語られると、淡々とした口調でありながら、当時の状況が生々しく伝わってきました。
そして私は、そのあとに徳水さんが語られたこと、それは徳水さんのその後の活動についてでしたが、これに驚き、心を打たれました。
徳水さんは、震災から3年後に定年で退職された後、雄勝に地域復興を目的とした会社を立ち上げたのです。子どもたちが成人したのちに、戻ってきて地域復興活動に参加するための受け皿をつくるためです。自社利益を追求するより、地域の課題を解決するための会社。そんな夢物語のような会社などあるはずはない、ならば自分たちで作ってしまえ、というわけで奥さんと二人で会社を立ち上げたというのです。
それが非営利型の一般社団法人「雄勝花物語」、活動拠点は奥さんの実家の跡地に作られた「雄勝ローズファクトリーガーデン」です。
「雄勝花物語」の事業は、3つの部門に分けて展開されています。
支援部門:被災地緑化支援、被災地支援コンサート、ローズガーデン開放
教育部門:防災教育、震災学習、ESD(持続可能な開発のための教育)、ボランティア受け入れ
事業部門:ハーブ&エディブルフラワー(食べられる花)販売、押し花体験教室
(さらに、ジャム加工場とコミュニティカフェの建設計画中)
雄勝花物語Facebook http://www.facebook.com/ogatsuflowerstory/
雄勝ローズファクトリーガーデン http://ogatsu-flowerstory.com/
ラジオ深夜便を聞いた前日にみたTV番組では、陸前高田市で大規模な土地の嵩上げ工事が終了し、土地が所有者に引き渡されたけれども、そこへ帰る計画をしている人は1/3もいないということが報告されていました。仕事もなく生活に必要な店もない、住民が暮らしていく手立てをどう作っていくか、行政にはその視点がないと指摘されていました。
徳水さんは、まさにそのことを問題にされ、会社をつくった。行政に文句を言うのではなく、それを自分でやってしまう。その姿勢と行動力は、きっとそこで働く若者たちに受け継がれていくと感じました。
それこそが、本当の教育だと思い、胸が熱くなりました。
★徳水さんの著書
『震災と向き合う子どもたち』新日本出版社
地域復興の主体を育てる復興教育、被災児の心のケア、徳水さん自身の再生物語のほかに、復興プロジェクト雄勝花物語の歩み、防波堤の問題、持続可能なまちづくりの課題など、創造的復興の問題点とそれに対峙する人間の復興論について書かれています。(Amazonで購入できます。1800円(税別)