2019年6月27日木曜日

55 どうする、“プラごみ大国”日本! ②

前項に続いてプラごみ対策問題。
今回は、その国際動向を調べてみた。
プラごみ輸出の問題もあるが、特に大きな問題となっているのは「海洋プラスチック汚染」。
捨てられたプラスチックが海の生態系をおびやかしているという問題で、地球レベルで早急に考えなくてはならない状況として認識されている。

▼2015年9月/国連SDGs

 SDGs(持続可能な開発目標)は、世界が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標で、国連が2015年9月「持続可能な開発サミット」で採択したものである。
 その14番目が海洋と海洋資源の保全、「海の豊かさを守ろう」である。
「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」としている。
 この SDGsを採択した加盟国193か国には、日本も含まれている。

 

 

▼2016年1月/ダボス会議

「プラスチックごみによる海洋汚染」が、地球環境に及ぼす特に重大な問題として国際的な共通認識になったのは、2016年1月にスイスのジュネーブで開催されたダボス会議での、エレン・マッカーサー財団の報告だったようだ。
財団は「世界の海洋には毎年500万~1300万トンのプラスチックごみが流入し、生態系をおびやかしている」「海水中に含まれるプラスチックごみの量は2050年には、海に生息する魚の重量よりも重くなる」との推計結果を報告したのである。
この会議には、日本から甘利、塩崎、河野の3大臣と日銀の黒田総裁が参加していた。

*エレン・マッカーサー財団
 循環型経済の推進を活動目標とするイギリスの財団。
 2005年にヨットの世界1周単独航海の世界記録を打ち立てたエレン・マッカーサー氏が設立。
    

▼2017年6月/国連海洋会議

初の国連海洋会議が開催され、国や企業、市民社会が持ち寄った海洋環境の改善に向けての行動を起こす仕組みづくりが話し合われた。日本からは、JAMSTEC(海洋開発機構)やアジア太平洋3R推進フォーラムの取り組みなどが持ち込まれた。
この会議には、さかなクン(さかなの帽子でおなじみのあの“さかなクン”)が、プラスチック廃棄物により海が危機的状況にあることと、彼がとるアクションについてのビデオメッセージが寄せられている。(メッセージは、ネットで視聴可)


▼2017年12月/中国

12月末、中国が主として生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止
日本の2017年の廃プラスチックの輸出は143万トン。中国の輸入禁止をうけて日本は、翌年の輸出先を、タイ、マレーシア、ベトナム、台湾に変更した。
中国はペレットについては禁止していなかったので、その輸出は継続された。


▼2018年6月8~9日/G7サミット

カナダで開催された先進国首脳会議(G7サミット)で、「海洋プラスチック憲章」が採択された。
海洋プラスチック汚染の対策として、使い捨てプラスチックの使用量を削減するなど世界各国に具体的な対応を促すもの。
日本は、アメリカと共に署名を拒否。(!?) 数値目標が義務的・期限付きであり、産業界との調整時間不足のためと、環境省は拒否の理由を説明。
しかし、使い捨てプラスチック削減の問題は、1年前の海洋会議ですでに提案されている問題で、その後の1年間、企業に対してどういう働きかけをしてきたのか、その経緯については説明されていない。


▼2018年6月~11月/日本

環境省にプラスチック資源小委員会を設置することを閣議決定。
 (やっと?)
 

▼2018年6月末/国連

国連環境計画(UNEP)が、世界のプラごみ対策状況の調査報告をまとめた。 
それによると、使い捨てプラスチック製品の生産を禁止したり、使用時に課金するなどの規制を導入済みの国・地域が少なくとも67以上あると報告されている。


▼2018年8月~11月/日本

環境省プラスティック資源小委員会8月17日に第1回目を開催。
原則として毎月1回の開催。1回目、2回目は国内外の状況について話し合われた。
第3回会議(10月)に、プラスチック資源循環戦略素案が出た。
11月、パブリックコメント募集。


▼2018年10月/バリ島国際会議

エレンマッカーサー財団がインドネシアのバリ島で、国連環境計画(UNEP)の支援により国際会議「New Plastics Economy Global Commitment」を開催。
世界から290の企業・団体が参加した。コカコーラ、ペプシコ、ネスレ、ダノン、ユニリーバ、アムコア(包装資材)など、いずれもグローバルな事業展開をしているところで、それらが生産しているプラ容器は世界の20%を占めるという。
この会議では、下記のようなプラスチックごみ削減宣言を行った。署名各社は、1年半ごとに自社の実施目標を見直し、達成度を公表するという。

 ●不要なプラ容器削減や、使い捨てプラ製品を再利用型へ切り替える。
 ●プラスチック包装を、2025年までに100%再利用可能な素材に転換する。

この活動には、WWF(世界自然保護基金:世界最大規模の環境NGO )、世界経済フォーラム、
消費財フォーラム(世界の消費財小売り及びメーカーのCEO主導組織)のほか、40の大学・研究機関、学者らも支援を表明している。
 また、欧州投資銀行、BNPパリバ証券(本部:パリ)、ING(オランダ)など15以上の金融機関も参加。プラスチック対策の循環経済を作り出すための支援を約束しているという。

残念ながら、この宣言に日本企業は一つも参加していない


▼2019年3月/EU

欧州連合(EU)の欧州議会で、ヨーロッパの海岸で最も多く見つかる使い捨てプラスチック製品10品目を、2021年までに禁止することを可決。また2025年までにペットボトルの90%をリサイクルするという目標も含まれている。

 

▼2019年5月/インド

5月に行われた選挙で圧勝し再選されたインドのモディ首相は、2022年までにすべての使い捨てプラスチックを排除すると宣言。


▼2019年6月/カナダ

カナダのトルドー首相は6月10日、2021年までに使い捨てプラスティックの使用を禁止すると宣言。まだ詳細は明らかになっていないが、他にもプラスチック汚染の軽減策を講じると発表した。
下記は、このとき語ったトルドー首相の言葉。

皆さんも記事を読んだり、写真を見たりしたことがあると思いますが、正直父親として子どもたちに説明することは難しいです。あなたはどう説明しますか。世界中の海岸にクジラの死体が打ち上げられ、胃の中にビニール袋がぎっしり詰まっていることを・・・
私はどう説明したらよいのでしょう。太平洋の深層部までプラスチックが存在することを・・・


▼2019年6月/日本

6月3日、環境省がレジ袋有料化の法制を制定する考えを発表。
6月15日、経済産業省が、2020年4月1日よりレジ袋の無料配布禁止を目指すことを発表。


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日本は、プラごみ対策ではまさに「周回遅れ」。
その場しのぎの対応しかしてきていないことがよくわかる。
問題の深刻さをとらえていない、今がよければよいのか、自分たちがよければよいのか。
日本国民であることが情けなくなってきた。

元気を出さねば・・・


 
 

 

 

 








  


 




 

2019年6月26日水曜日

54 どうする、“プラごみ大国”日本! ①

 

プラごみ受け入れ国からの怒りの声


 米国、カナダ、日本、オーストラリアなどから汚染プラごみを送り付けられたマレーシアやフィリピンから、怒りの声が上がった。

 プラごみの中には、おむつなどの生活ごみまで入っていたという。フィリピンやマレーシアは、汚染プラごみを国々に送り返すと言っている。当然だろう。
 送ったのは業者であって国ではないと突っぱねていたカナダは、フィリピンのドゥテルテ大統領からの強い抗議を受けて引き取りを受け入れるとともに、6月末に2021年までに使い捨てプラスティックを禁止すると発表した。

 では日本はどうする?
 
 日本は世界第2のプラごみ大国だ。(1位はもちろんアメリカ)
 国連環境計画(UNEP)の報告によれば、日本が1年間に出すプラごみは一人あたり32㎏、全体量にして約400万トンである。リサイクル率84%(残りは焼却)と言いながら、そのうちの半分は他国への輸出だった。
 2016年度の日本のプラごみ輸出量は約153万トン。そのうちの約80万トンを中国、約50万トンを香港に輸出している。香港は最終的に中国に輸出しているので、合計130万トン、つまりプラごみの85%を中国に輸出していたと言ってよい。

 中国は世界から1500万トンの廃プラスチックを輸入し、ペレットにしたのち衣類などに加工していたのだが、廃プラの中に汚染ゴミが混入していてリサイクルの過程で環境汚染が深刻化したため、2017年12月末に外国ごみの輸入を禁止した。そして、中国に代わってプラごみ受け入れ国となったのがフィリピンやマレーシアなど東南アジアの国々だった。
 その国々から抗議の声が上がったのだ。

 日本はどうする?
 プラごみ輸出大国から、そして、そもそものプラごみ大国からどう脱却するのか?


レジ袋有料化


 日本は2020年から、プラ製レジ袋の有償化の方針を出した。
 6月3日に環境省が、無償配布を法令で禁止する考えを発表し、6月15日に経済産業省が来年4月1日からレジ袋有料義務化の実施をめざすと表明した。
 
 なんと控えめな対策・・・
 
 日本で1年間に使われるレジ袋は、重さにして30万2千トンという。
 プラごみ全体量400万トンの7.5%に過ぎない。
 しかも禁止ではなく、有料化。どれほど減らすことができるのか。

 ペットボトルを町中の自動販売機で売り、
 ファストフード店やスーパーでは使い捨て容器が氾濫し、
 野菜や果物などの生鮮食品までプラスチック包装する日本だ。
 もっと根本的な対策を取る必要がある。
 少なくともその方向を出してほしかった。

 プラごみをつくらぬために、製造・流通の方法への新しい知恵が必要だと思う。
 自然に帰る包装材もこれからの研究課題になるだろう。
 そうした研究は、新しい産業の発展にきっとつながっていくはずだ。
 もっと国を挙げての積極的な対策が取られることを期待したい。

 とりあえず我が家は脱レジ袋、脱ペットボトル。マイバッグ、米ボトル持参の生活。

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 もちろん、レジ袋有料化はやらないよりはやった方がよい。
 CO2削減にもつながるのだから。

 世論調査では「レジ袋が有料になったらもらわない」という人の割合は70%であるという。
 1年間に使われるレジ袋の枚数は、最も多く使われているLサイズの袋(6.8g)に換算すると、なんと500億枚くらいになる。
 もしこの対策で、レジ袋使用が70%減になるとしたら、350億枚減らせることになる。
 CO2排出量は33g/1枚なので、35,000,000,000×33=1,155,000,000,000(g)
 つまり、1,155,000トン削減できる。

 (これは、東急世田谷線が自然エネルギー化で1年間に減らす量1263トンの915倍)