2017年4月6日木曜日

12.桜が咲かなくなる日

 この1週間、各地から桜の便りが寄せられている。東京では全国に先駆けて3月21日に開花宣言があったのち、寒気が戻ったり雨が降ったりで、ようやく暖かくなった今週、やっと見ごろを迎えた。
 今年は全国的に桜の開花が遅いようである。それも特に南の九州でその傾向がある。鹿児島では、4月5日にやっと開花宣言が行われた。それは、ことしの鹿児島の3月が寒かったからというわけではなく、冬が寒くなかったせいであるというのである。

 桜の花芽は前の年の夏にでき、それからいったん「休眠」するという。その休眠は、冬の低温にさらされて眠りから覚める。それを「休眠打破」というそうだ。そして春になり、気温が上昇するにしたがって花芽が成長し「生成」するという。
 つまり、桜の開花には、春先の暖かさと同時に、秋から冬にかけての寒さが必要なのである。桜は四季のある日本だからこそ美しく咲く、ということである。今年の冬は、北の地方には大雪をもたらしたが、それ以外の地域では大変暖かかった。それが桜の目覚めを妨げ、開花を遅らせたということのようだ。
 この冬の暖かさはと旧温暖化のもたらしたもの。このまま温暖化が進んでいくと、やがて日本は亜熱帯になるという懸念も出ている。一年中暖かい常夏の国では桜は咲くことができなくなる。今年の桜の開花状況は、温暖化の進行を私たちに警告しているのではないか、とも思えるのである。

 民間気象会社のウェザーニュース社は、「100年後には東京で桜が咲かなくなる」という開花シミュレーションを2009年に発表している。
 気象変動に関する政府間パネル(Intergovamment Panel on Climate Change,略称IPPC:国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集・整理のための政府間機構)が予想した気温データを使って行ったものである。それによると、九州、四国と南の方からだんだん桜が咲かなくなっていき、2109年には東京でも咲かなくなるという結果になったという。




 3月28日、トランプ大統領は、オバマ大統領が進めた温暖化防止対策「クリーン・パワー・プラン」を見直すように命じる大統領令に署名した。温暖化対策の国際的枠組みの「パリ協定」にも否定的だ。アメリカのCO2排出量は、世界の排出量の15.2%、中国28.7%と合わせると40%を超える。アメリカの加わらない温暖化対策は、その効果を大きく減少させることになる。

 トランプ大統領は「環境より経済を重視する」としている。そもそも「地球温暖化」そのものについて疑念を持っているとも言われる。しかしアメリカの経済界においても、「地球温暖化は広く認められた科学であり、この問題に対処する環境技術は、環境保護だけでなく企業利益の点からも理にかなっている」とする企業も多い。GMや、最大石油メジャーのエクソンモービル社もそれらの一つである。エクソンモービル社というのは、トランプ政権における現国務長官ティラーソン氏が就任直前までCEOを務めた会社であり、氏自身も温暖化対策の必要性を認めているという。
 にもかかわらず、温暖化対策見直しの大統領令が出されてしまうというのは、どういうことなのか。トップの間違いを修正できないアメリカは、地球にとって大変危険な国になったと思わざるを得ない。

 桜が咲かなくならないようにするために、私たちは何をしたらよいのだろう。
 桜が咲かなくなる日を招くのは、いま生きている人間たちの責任である。
 


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